例えば、断水時には汚水を吸い込む危険性があり、そのような場合に備えて残留塩素を一定濃度に保ち、殺菌する必要がある訳です。法的規定ではありませんが、水道法第16では、末端給水栓において残留塩素を0.1mg/l以上としており、広域水道の配水区域では浄水場から家庭の蛇口まで二,三日以上かかるところもあることから一番遠い所を目標に塩素を入れることにしています。
0.1mg/l以上ということは、理屈の上では幾らでも塩素をいれてもよいことになり、従ってどうしても高めの注入なってしまいます(新しい水道基準によると、上限は1mg/l程度との表現で最大値を設けた)。表に示すように、他国と比較しても日本の基準がかなり高めに設定されていることが分かります。
その背景には、戦後マッカサーの命令で米軍(野戦)で採用されている高濃度の塩素注入が導入された経緯があります。さらに高度成長期を境に水質の悪化に拍車がかかり、世界でも類を見ない塩素使用となっています。
●塩素イオン・残留塩素(遊離残留塩素、結合残留塩素)
・塩素イオン:Cl- 200mg/l以下(基準値)
塩素イオンとは、水中に溶解している塩化物(NaCl, KCl, CaCl2)中の塩素分をいい、自然界に広く存在し、水に溶解し、塩素イオンとして測定されます。
水道水中の塩素イオンは、天然由来のものが多く、表流水中では一般に数mg/l〜十数mg/l程度です。水中の塩素イオンの味への影響は陽イオンにより異なり、NaClでは210mg/l、KClでは310mg/l、CaCl2では222mg/lであると言われています。
・遊離残留塩素:HClO(次亜塩素酸)、ClO-(次亜塩素酸イオン)の2種類。微量にして迅速な殺菌効果。0.1ppm以上〜1ppm程度(基準値)。
・結合残留塩素:NH2Cl(クロラミン)、NHCl2(ジクロラミン)、NCl3(3塩化窒素)などアンモニアと結合したもの。ゆっくり反応するため殺菌力は弱いが残留性は高い。0.4ppm以上(基準値)
●塩素注入量=塩素要求量+殺菌要求量
塩素要求量:水中のアンモニア、有機物の酸化に消費される
殺菌要求量:赤痢菌、チフス菌等の殺菌
赤痢菌、チフス菌等の消化器系伝染病原細菌の殺菌に対しては0.2ppm、ウイルスでは0.6ppm以上でないと不活性化できない。
●塩素殺菌
塩素は水と反応し、次亜塩素酸と塩酸を生じます。
Cl2 + H2O → HClO + HCl
(塩素) (水)(次亜塩素酸)(塩酸)
HClO → HCl + O
(発生期の酸素)
塩素に触れたり吸ったりすると、皮膚や喉の粘膜から水分を奪い、次亜塩素酸と塩酸を生じ、強い刺激を与え、細胞を破壊します。その主役は発生期の酸素であり、これには殺菌作用および漂白作用があります。浄水場においては、殺菌のみならず鉄、マンガン、アンモニア等を酸化除去し、水をきれいにする目的で使われています。
●塩素注入の問題点
安価で殺菌力が強く、効果も持続しますので、大量に確実に殺菌する方法としては塩素が最も適しています。しかしながら、
1.塩素はビタミンを破壊したり、
2.動脈硬化症や心臓病といった循環器障害を引き起こすことが報告されています。
3.塩素はまた、水道水中の有機物(フミン酸;植物の腐敗、トイレの排水が細菌や微生物の分解能力を超えた時にできる有機物)と反応しトリハ
ロメタンを生成します。
4種類のトリハロメタンは発ガン性、変異原性があるとし1981年規制項目として水質基準に加えられました。
残留塩素の測定法としてはオルトトリジン(OT)法及びジフェニル-p-フェニレンジアミン法が指定されています。
1.ビタミン破壊
水道水中の塩素は食物に含まれるビタミンを破壊してしまうことが分かっています。お茶や野菜に含まれるビタミンCは、水道水中の塩素と反応して瞬時にアスコルビン酸-酸化体と塩酸に変わり破壊されます。
水道水でお米炊くとビタミンB1が破壊され半減しますが、塩素のない水ではほとんど壊れないことが証明されています(京都大学、糸川教授)。
2.成人病
塩素は血管壁の動脈硬化を引き起こし、心臓発作や脳血管障害を引き起こす可能性が指摘されています。
水道水に塩素を多く入れていない1920年以前には心臓病は注目されていませんでしたが、塩素を本格的に使用し始めてから10年後(1930年代)に統計的にも重大な病気として認められるようになりました。ミネラルの多い硬水地区では、動脈硬化による心臓病の発生率は低いと報告されています。ミネラルは塩素と反応して塩素を無毒化すると考えられます。
朝鮮戦争及びベトナム戦争で戦死した若い兵士(20歳前半)を検死解剖したところ、極めて高いアテローム性動脈硬化症が見出されました。これは、戦場においては衛生上の問題から高濃度の塩素を飲料水として飲まざるを得なかったことも一因と考えられています。
3.トリハロメタンについては、水道水中の汚染物質の項を参照して下さい。 |